今の建物に移ったのは沼津に戻って1年ほどたってからだ。同じ頃、仕事も広がりはじめ、また同時に大田さん自身の思いも変わってきたという。最初のうちは毎週のように東京に通い、沼津は“制作するための場所”にすぎなかった。しかし、ここには沼津からの文化を発信しようと熱い思いを抱く多くの人々がいた。ことに2012年に「沼津自慢フェスタ」の一環として野外レストランのテーブルを制作したのは大きな出会いにつながった。今は地元のクリエーター達と共に取り組む仕事は増えている。東京に出るのも2か月に1回ほどだ。
「毎日、海を眺めて仕事し、ご飯を食べて、寝る。ときには釣った魚も食卓に上る。そんなサイクルにとても充足を感じます。息子や娘も地域の人に見守られながら育っています。だからこそずっとここで暮らし、この土地の力になっていきたい」
工房には近所の人もフラリと訪れる。大都市とのつながりを保つつつ、地域に根ざした暮らしを――。それが大田さんがめざし、家族と共に実現した新しい生き方だ。
広い窓のある建物の1階が工房。水産加工工場跡を大田さん自身でリノベーションした。
ナンバーが入った「FILLINGCABINET」は都内の生活雑貨店にも卸している定番商品。
素材を生かしたシンプルなデザインが持ち味。これは都内のレストランでのオリジナルプロダクト。
山形出身の妻・美希さんや子どもたちも、気候が温暖で海も山もある沼津での生活をとても気に入っている。
家具工房O.F.C
静岡県沼津市江浦170-12
TEL.055-919-4041