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海を目の前にした工房で、家族5人の心豊かな暮らし

静岡県沼津市「家具工房O.F.C」

沼津は独特の雰囲気を持つ街だ。美しい海岸を前にしたのどかな雰囲気の中、都会との関係を保ちながら、自身のペースで仕事と暮らしを作り上げていく人達がいる。そんな一人、家具工房を営む大田貴則さんを訪ねた。

イタリアンレストランの料理人から家具職人に転職

大田貴則さんが営む家具工房O.F.Cがあるのは、沼津駅から車で15分ほどの漁師町、江浦地区と呼ばれるエリアだ。建物の目の前は海。もともとは養殖加工会社だった3階建に自ら改装を加え、住まい兼作業場にしたのだという。大田さんはここで、一男二女の5人家族で暮らす。
沼津は大田さんが小学2年生から生活していた町だ。生まれは広島だが、ほぼ故郷と言っていい。高校卒業後に上京し、都心の有名イタリアンレストランで料理人を務めていたそうだ。それがなぜ、故郷で家具を作るという道に転換したのか?
「きっかけは子どもが生まれたことでした」と大田さんは言う。「飲食の仕事は時間も不規則。以前からインテリアが好きで、興味があった家具作りに挑戦したいと思ったんです」
初心者ながら都内の家具制作所に採用されたのは、その熱意ゆえだろう。4年間の修業を経て、自分がイメージする家具を作ろうと、ものづくりに没頭できる環境がある沼津に2009年Uターン。レストランの什器など東京で培った関係を軸に独立を果たした。

建物の2階はデスクワークスペース、3階を住居にしている。

東京と地元、両方を見据えつつ自然なサイクルで暮らす

今の建物に移ったのは沼津に戻って1年ほどたってからだ。同じ頃、仕事も広がりはじめ、また同時に大田さん自身の思いも変わってきたという。最初のうちは毎週のように東京に通い、沼津は“制作するための場所”にすぎなかった。しかし、ここには沼津からの文化を発信しようと熱い思いを抱く多くの人々がいた。ことに2012年に「沼津自慢フェスタ」の一環として野外レストランのテーブルを制作したのは大きな出会いにつながった。今は地元のクリエーター達と共に取り組む仕事は増えている。東京に出るのも2か月に1回ほどだ。
「毎日、海を眺めて仕事し、ご飯を食べて、寝る。ときには釣った魚も食卓に上る。そんなサイクルにとても充足を感じます。息子や娘も地域の人に見守られながら育っています。だからこそずっとここで暮らし、この土地の力になっていきたい」
工房には近所の人もフラリと訪れる。大都市とのつながりを保つつつ、地域に根ざした暮らしを――。それが大田さんがめざし、家族と共に実現した新しい生き方だ。

広い窓のある建物の1階が工房。水産加工工場跡を大田さん自身でリノベーションした。

ナンバーが入った「FILLINGCABINET」は都内の生活雑貨店にも卸している定番商品。

素材を生かしたシンプルなデザインが持ち味。これは都内のレストランでのオリジナルプロダクト。

山形出身の妻・美希さんや子どもたちも、気候が温暖で海も山もある沼津での生活をとても気に入っている。

家具工房O.F.C
静岡県沼津市江浦170-12
TEL.055-919-4041

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