一方、JR山手線の南側、長円の内側に入るエリアは、白山通り沿道に突如とした都心感があり、また独特な印象です。
白山通り沿いに連なるビルには、名の知れたコンビニ、テイクアウト店や飲食店チェーンがほぼ網羅されているくらい充実しています。地場の店も含め、一人でふらりと入るのでも、家族連れでも、違和感なく溶け込めそうな懐の深さがあります。
白山通りから、名勝「六義園」に向かう通りの角には、絵本や児童書の草分け「福音館書店」があります。このおよそJR「巣鴨」駅のラインから東方向にある隣のJR「駒込」駅にかけては、ひっそりとした静けさに満ちた街路樹が道なりに、またゆったり造られた住まいが並んでいます。
このエリア、古くは加賀前田家の中屋敷で、明治期に三菱財閥の創業者、岩崎弥太郎氏が購入し、大正期に三代目久弥氏が分譲した「大和郷(やまとむら)と呼ばれる高級住宅地。最近でも、48億円近い「売物件」があったことが話題になりました。さもありなんと納得のいく街の品格が確かにあります。
この「大和郷」側、JR「巣鴨」駅南口出てすぐには、スーパー「サミット」があり、店内はお年寄りや家族連れで賑わっています。
「巣鴨地蔵通り商店街」側、北口からやや駒込方向に行くとスーパー「西友」があり、こちらも老若男女でいっぱい。いずれも地元に住む人たちの台所として機能していることが伺えます。
全体的に都内にしては物価も比較的手頃な印象で、暮らしやすさが伺えます。JR「巣鴨」駅の駅ビル「アトレヴィ巣鴨」は2010年開業ですが、書店併設カフェなど、都会的なテナントのラインナップに、若い世代の住人のニーズにも応えているように思えました。
庶民的なあたたかさと、格式の高さ。いずれも、長い歴史に裏打ちされた深みのある「巣鴨」エリアが注目されてきたのは、はりぼてではない「すっぴん」、いわば「本物」を見分けられる人が増えてきた証左なのではないでしょうか。