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移住者の若者と地元民をつなぐ鳥獣被害対策という仕事

山梨県南アルプス市を拠点に、イノシシ、シカ、サルなどの鳥獣被害対策を行っているNPO団体「甲斐けもの社中」。意欲のある若者たちを「現地専門員」として育成し、鳥獣被害対策の専門技術や知識を伝えている。

『かわいい』『かわいそう』だけじゃない

山梨県では、ここ10年でサルやシカ、イノシシなどの農作物被害が急増している。原因には、自然環境の変化だけでなく、中山間地域の過疎、高齢化などの社会環境の変化が挙げられる。柵を設置、維持してイノシシやシカから集落を守る人が減り、サルを追い払う人が減少すると、人間を怖がらなくなった野生動物が人里近くに居ついてしまう。
「甲斐けもの社中」の役割は、野生動物と人間社会の調整をはかること。捕獲したサルに電波発信機をつけて群れの分布を把握し、被害状況を調査して、行政と地域住民に、効果的な鳥獣被害対策の技術を伝えている。
「野生動物とともに暮らすということは、『かわいい』『かわいそう』だけじゃない」と山本さん。

サルの首輪の無線電波を受信するためのアンテナや追い払い用の駆逐用煙火など、持ち歩く道具の一部。

鳥獣被害対策を、移住者と地元住民の橋渡しに

最近では、「社中」のスタッフだけでなく、若手の移住者を「現地専門員」としてアルバイトで雇い、その技術や知識を広めている。
「集落という限定されたコミュニティに移住者がなじむのは大変。こうした鳥獣被害対策の知識があれば、地域の人と話す機会も増える」とは、山本さんがみずからの移住体験から感じたことだ。仕事として、確立できれば収入も見込める。技術をもつ”人財”は、今後も育てていく予定だ。
「自分がやってきたことを通して若い世代が地域の将来を見すえてくれるのは素直にうれしい」鳥獣被害対策は、移住者と地元住民の橋渡しになっているようだ。

山本圭介(やまもと・けいすけ)
兵庫県神戸市出身。大学院のとき野生動物による農作物の被害対策の調査で山梨県を尋ねる。その際に、「研究のために人は大勢訪ねてくるが、終わったらみんな帰ってしまう」という地元住民の言葉を受け、Iターンを決意。修了後も同地に関わり続け、活動を継続した。2013年にNPO法人「甲斐けもの社中」を設立。2013年より山梨県鳥獣被害対策専門委員委嘱。

委託元の市役所職員のみなさんと。

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