ホテルで働いていたとき、古川さんはある疑問を抱いた。ここには若い世代が来ない。若くても十分に楽しめる場所なのに、なぜだろう。そうだ、体験型のゲストハウスを作ったら、もっと隠岐の魅力を伝えられるかもしれない。企画書を書いて支配人に相談してみると「応援するよ」と力になってくれそうな島の人たちを紹介してくれた。
それからは、国の創業補助金やクラウドファウンディングを活用しながら資金を作り、物件を探して改造し、と無我夢中で準備を進めていった。わずか8カ月で「佃屋」はオープンを迎え、その年の8月だけで約100人が宿泊するという快挙を遂げた。
「ここへ来て、私は隠岐を包む大自然とつながり、島の人たちとつながりました。いまは島へ来る人たちと隠岐とをつなげ、つながるという感覚を伝えていきたいと思っています」
佃屋では、時に島の人々も集まって酒を酌み交わす。いま隠岐の島には、「都会からやって来た女の子」が生み出した新たな風が吹いている。
元庄屋だった屋敷を改装した「佃屋」。
●島根県隠岐郡隠岐の島町中村152-1
TEL.08512-4-0077
敷地内の畑で、ナス、トマト、モロヘイヤなど野菜作りも行うオーナーの古川咲季さん。
純日本風家屋のたたずまいをそのまま残した「佃屋」の室内。
佃屋には近所の人もやって来て、BBQなどを行うことも。