流行を追いかけることは商売として考えれば悪いとは思いません。ただ、新しいものって時間の淘汰を経ていないですよね。一方、歴史に耐えてきたものというのは、これまでの人たちがその美味しさを残しておきたいと思ってきたから今あるわけです。もちろん、新しいものはいいし、珍しい。でも僕は、二度三度食べたら飽きられてしまうような流行よりも、100年後でも必要とされるものを尊重できるようにありたい。もし自分がそういうものの美味しさを理解できないとしたら、理解できるまで食べて、理解できる人間になりたい。
僕は、フランス菓子というフランス人が長い時間をかけて紡いできたものを、あまり日本人的に歪めないで伝えて、その結果、日本人の食生活が豊かになったらいいなと願っています。もちろん新しいものを作る時も、100年残るものを作りたいと考えているし、毎日お米を食べている日本人にも、そうではないフランス人にも「美味しい」と言ってもらえるようなお菓子を作りたいと思っています。
パティスリー・ノリエット(東京都世田谷区赤堤5-43-1)
永井紀之さん