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林業を通して日本の山の生態系を守る若き“山守”たち

林業の担い手が激減し、人工林の荒廃が問題になっている今、日本の山を守ろうと動き出した若者たちがいる。山の暮らしを選び、重機やチェーンソーをこともなく操る彼らは20~30代。その笑顔はなんとも頼もしい。

学生時代の薪作りを機に芽生えた、山里の環境を守る心

欝蒼とした林の中、チェーンソーの音が響く。50年以上前に植えられた杉や檜を間伐する音だ。混みあった木々を適切に間引けば建材や薪に使えるし、残した木は大きく育つ。地面に太陽の光が届き、木の下に緑が増えて動物や昆虫も集まる。日本各地に見られる人工林で、林業従事者たちはそうやって山の生態系を守ってきた。しかし今、担い手がいなくなった山は荒れていく。そこに新たな一石を投じたのが、久米歩さんが代表を務める民間の林業サービス会社ソマウッドだ。
富山県生まれの久米さんが静岡の山村に住み始めたのは大学生時代。ゼミの先生が持つ山荘で管理人として6年間暮らし、結婚を機に集落の空き家を借りた。
「日々の薪を得るためにチェーンソーの使い方を覚えたことから木こりの仕事に興味を持ちました。植林された木も、山の美しい風景も、この地域に暮らしてきた人たちが長い時間をかけて育んできたもの。その恩恵に対して、少しでも恩返ししたいと思ったんです」と久米さんは言う。

ソマウッドを立ち上げた代表の久米歩さん。

地域に求められる仕事を自ら担い、若者たちが輝ける場を作る

2009年に仲間と作ったソマウッドは、山主に必要な手入れと見積もりを提案し、原木も材木店に直接卸すというこれまでにない試みだった。最初の3年は経営が成り立たず、バイトをかけもちしながらしのいだそうだ。けれどもやがて彼らの熱い思いは地元の人々の共感を呼んでいく。今では山主からの依頼は増え、久米さんも林業だけで妻と3人の子供を養えるまでに至った。もちろん現代の日本では人工林の管理と原木販売だけでは生き残りは難しい。そこで付加価値のある自社製品を持とうと、今年からはまず間伐材を使った薪の販売もスタートさせている。
現在は社員も増えた。立ち上げメンバーの鈴木嗣人さんや前職は造船業で三重県出身の堀出さん、写真関係の仕事を経て山暮らしを選んだ渡辺由貴子さんなど皆、都市の生活を経験した若者たちだ。
「田舎は若い人が少ないから、住むだけで喜ばれる。そこで地域に役立つ仕事を作り出せばいっそう活躍できる。田舎こそ若者が輝ける場。僕達はその前例を作りたい」と久米さん。
自分たちの手で山を守り、育てる――。若き“山守”たちの心意気に山里の期待が集まる。

チェーンソーで作業中のソマウッドのスタッフ。

昨年から出荷できなかった木は薪としても販売するように。

紅一点の渡辺由貴子さん。「自然とのつながりを肌で感じられる」と意欲的だ。

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